「作業中に発生した業務災害の応急処置方法について

解体工事などの屋外作業をはじめ、時には遺品整理のような屋内の作業であっても、現場に出ていれば作業の中で何かしら突然のけがに見舞われる可能性は常に存在します。

大抵の場合は膝をすりむくような擦過傷であったり、ちょっとした打ち身のような小さなけがかもしれませんが、時には突き出たくぎを踏み抜いてしまい、破傷風のような重大な病気の引き金になる場合もありえます。

こうした事故に出くわした時、医療施設に出向いたり救急車に搬送してもらう場合であっても、それに先立って正しい応急処置をできるようにしておくと、けがを深刻化させないための大きな助けになります。

ここでは、内閣官房が公表している『怪我などに対する応急措置』などの資料を参考に、医療従事者でない方にも行える簡単な応急処置の仕方を確認し、作業中の事故によるけがの危険をできる限り抑えられるように準備していきましょう。

切り傷などにより出血している場

・出血の伴うけがを応急処置する場合は、直に血液に触れないよう、手にビニール・ゴム手袋やスーパーの袋などを装着しましょう。

・出血している場合、傷口が泥や砂などで汚れていたら、なるべく早く水道水などのきれいな水でその傷口を十分に洗い流す必要があります。

・土や砂のほか、石、金属やガラス片などが傷口に残っているようであれば、徹底的に異物を取り除いてください。その後清潔なガーゼやシーツなどの布を患部に直接、やや強く押しあて、手のひらで圧迫して止血に努めましょう。

・出血量が多い場合は、骨折がないことを確認した上で、傷口より心臓に近い動脈(脈を感じるところ)を強く圧迫します。患部が手足であれば、心臓より高い位置に保つことで止血しやすくなります。ただし、抑える際に輪ゴムなどで縛ってしまうと、循環障害を起こす危険がありますので避けてください。

・出血が止まったら、傷口を清潔に保つよう気を付けながら、その上に包帯を巻きます。

・もし手元に包帯やガーゼがない場合は、ラップを傷口より大きめに切って白色ワセリンを塗り、傷に当ててテープで密封する方法があります。

錆びた釘など不衛生なものを刺してしまっていたものによる場合

釘に限らず、竹の切り株や落ちているガラス片など、不衛生で深い傷をつくりやすいものによる傷口は、ただ消毒したり縫ったりしただけでは後々重大な事態に進展する危険があります。

特に破傷風(はしょうふう)という病気は、土の上で繁殖する破傷風菌というバイ菌の出す毒によって、けがをしてから数日で口を開けにくくなり、全身の筋肉がこわばり、最終的には全身が痙攣して死に至る可能性もあります。

全身に症状が出始めたら、自然に毒が消えるまで設備の整った救命センターで、約一ヶ月は全身麻酔を受け、人工呼吸器を使った集中治療を続けなければならなくなります。
応急処置を行ったら、医療機関で必ず以下の予防を行いましょう。

傷口は水道水などきれいな水ですみずみまで洗い、汚い傷の部分を取り去ったうえで消毒します。消毒にはワクチンの「破傷風トキソイド」と、傷によっては「破傷風免疫ヒトグロブリン」も使います。

破傷風の予防接種(三種混合ワクチンなど)は、効果が完成するのに接種が3回(初回、1ヶ月後、6~12ヶ月後)必要で、一度の効果は3~5年なので予防効果を保つためには5年に一回は予防接種をする必要があります。

最後の予防接種がいつだったかわからなければ、けがの後は、主治医やお近くの医療機関(内科、感染症内科)において、ただちに予防接種を行ってください。

骨折している場合

出血している場合は、まず切り傷の時のように手当てを行い、負傷した箇所はあまり動かさないようにします。氷あるいは冷湿布などがあれば、それを利用して腫れや痛みをやわらげてください。

可能であれば、添え木を当て、骨折部分を上下から固定します。添え木は、棒や板、傘やダンボールなどでも代用できます。
骨折箇所が腕の場合は、三角巾などで固定します。

ねんざしている場合

氷あるいは冷湿布などがあれば、それを利用して腫れや痛みをやわらげてください。
靴は添え木の替わりになるので脱がずに、その上から以下の手順で三角巾や布を使って固定します。

手順1:布を棒状に丸め、中央を足のうらにあて、両端を足首の後ろに引き上げて交差させます。
手順2:布の両端を足首の甲に回して交差させ、かかとに巻き付いている布の内側に通します。
手順3:通した布の両端を足の甲に折り返して結び、完成です。

かゆみや発疹など、皮膚に異常が見られる場合

汚染された衣類は、汚染物質が目や鼻と接触しないように切り取って、ビニール袋に密閉します。その後、水と石けんで手、顔、体を洗いましょう。

身体に火が付いた場合(着衣着火)

着火)
水や消火器により体についた火を消しましょう。衣服に着火していた場合、急いでそれを脱ぎ叩くなどして消化します。
水や消火器がない場合は、決して走ったりせず、手をついて地面に転がりましょう。

やけどへの応急処置

水道水などのきれいな流水で、痛みが和らぐまで10~20分程度、十分に冷やします。
靴下など衣類を着ている場合は、着衣ごと冷やしてください(指輪、時計などは外します)。

やけどを冷やすと、痛みが軽くなるだけでなく、やけどが悪化することを防ぎ、治りを早くします。ただし、氷や冷却パックで冷やしすぎると逆に悪化することがあります。
範囲が広い場合も含めて注意しましょう。

作業中は予期せず様々な事故に巻き込まれる可能性があります。
作業環境の安全には常に注意を払い、 事故を未然に防ぐよう心がけましょう。

また、もし事故が発生した場合は、直ちに応急処置を行い、最寄りの医療機関で適切な治療を受けるようにしましょう。

(参考文献)
内閣官房副長官補(事態対処・危機管理担当)付.怪我などに対する応急措置. 内閣官房 国民保護ポータルサイト.(2019.03.31).

愛媛大学総合健康センター.切り傷・刺し傷・擦り傷・挫創の応急処置.健康教育・健康情報.